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Artist Press Vol. 14 > 相曽賢一朗 / Ken Aiso

相曽賢一朗インタビュー
コンサートレポート: リサイタル(11月14日 東京文化会館リサイタルホール) 室内楽コンサート「シューマンと仲間たち」(11月25日 神奈川県民ホール小ホール)



コンサートレポート

リサイタル(11月14日 東京文化会館リサイタルホール)
室内楽コンサート「シューマンと仲間たち」(11月25日 神奈川県民ホール小ホール)



相曽賢一朗 ヴァイオリン・リサイタル
14 November 2006 at Tokyo Bunka Kaikan
-Recital hall

ロンドンを中心に活躍する相曽賢一朗。毎年、日本で開かれるリサイタルにはこれまでも足を運んでいる。その度に感銘を受けるのは、なんといっても清涼感に満ちた美しい音色だ。「美しい音色」といってもさまざまだが、彼の音色は本当にすがすがしく響き渡る。淀むことなくどこまでも真っ直ぐに伸びていく。聴いていると心が浄化されるような、そんな清涼感だ。

はたしてこの日のプログラムでも、その魅力は存分に活かされていた。暖かく柔らかな日の光に包まれたようなイントロダクションから始まった
モーツァルトは明快、快活、そして場面場面でさまざまな表情を見せた。この日のプログラムは上記のモーツァルトソナタ、ベートーベンソナタ2曲、そして相曽の洗練されたテクニックを存分に堪能したエルンスト「夏の名残のバラ」という構成だった。ラストのクロイツェルソナタは非常に緊迫感に満ち、聴き応え十分だったが、個人的に最も印象に残ったのはベートーベン ソナタ No. 8であった。ヴァイオリンとピアノが正に対等に、互いに呼応し合い、集中力を増していく中で作り出されていくアンサンブルは圧巻で、思わず引き込まれてしまった。聴くたびに充実感が増し、その精神性の高さを感じさせる
。今後の活躍がますます楽しみである。


プログラム)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 KV454
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第8番 ト長調 作品30−3
エルンスト:夏の名残のバラ(庭の千草のテーマによる変奏曲)(ヴァイオリン・ソロ)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47 "クロイツェル"

ネルソン・ゲルナー / Nelson Goerner (ピアノ)




室内楽コンサート「シューマンと仲間たち」
25 November at Kanagawa Kenmin Hall -Small hall

終演後、「極上の室内楽」という声が聴こえてきた。アンコールが終わっても拍手は鳴り止まず、そこに居る者すべての心を完全に捉えてしまったかのようであった。この日のコンサートは、スティーブン・イッサーリス・プレゼンツ・シューマン・プロジェクトの最終日に行われた。楽曲や作曲家、歴史背景に精通し、その類まれな表現力で常に聴衆に深い感銘を与え続けているイッサーリス。その彼が率いる室内楽ということで楽しみにしていたのだが、その演奏は期待をはるかに超えたものだった。

叙情的なメロディを抑揚たっぷりに歌いつづったクララ・シューマン「ピアノ三重奏曲ト短調」。見事に調和し自在に表情を変化させていく2本の弦とピアノに、冒頭からすっかり引き込まれた。主旋律を奏でるヴァイオリンの深く繊細なメロディが本当に美しかった。
続くブラームスハ短調の四重奏曲は、深刻な緊張感漂うイントロダクションに始まり、壮大なスケールでドラマティックに、ダイナミックに展開した。ヴィオラが加わりより厚みを増したアンサンブルは、まるで4人が「音そのもの」になってオーディエンスに語り、エネルギーを放出するようであった。そして激しい情熱に満ちた中で、3楽章でゆったりと奏でられたヴィオラの深みのある音色、そしてヴァイオリンとのハーモニーの美しさが際立っていた。

休憩を挟んで2部のロベルト・シューマン「ピアノ四重奏曲変ホ長調」。この見事なカルテットはより集中力を増し、全てが凝縮された演奏で会場全体を大きな感動で包み込んだ。特に第3楽章は絶品で、深くて、このうえもなく優美な音楽に大きく心を揺さぶられた。イッサーリスの奏でる幸福感に満ちたチェロの音色が印象的だった。

この日のピアニスト、ゲルナーの演奏はさすがで、常に最適な音量バランスを保ちながら、繊細なメロディから全体を盛り上げるようなフォルテッシモまで、実に見事に表現していた。アンコールで再び演奏したシューマンの第3楽章まで、どの演奏も芸術性の高い名演であり、この場を共有できた幸運に感謝せずにはいられなかった。

プログラム)
クララ・シューマン:ピアノ三重奏曲 作品17
ブラームス: ピアノ四重奏曲 ハ短調 作品60
ローベルト・シューマン:ピアノ四重奏曲 作品47

演奏)
スティーヴン・イッサーリス / Steven Isserlis (チェロ・企画構成)
藤田 ありさ / Arisa Fujita (ヴァイオリン) 
相曽 賢一朗 / Ken Aiso (ヴィオラ) 
ネルソン・ゲルナー / Nelson Goerner (ピアノ)


Report by Asako Matsuzaka
Special Thanks to Masuo Aiso, Akiko Aiso, KAJIMOTO CONCERT MANAGEMENT CO., LTD.
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